中国が一国二制度の則を破って香港の最終支配に着手した。日本領の尖閣列島への侵略は、連続50日以上、止めようとしない。南シナ海への侵略はほぼ終了したのか。経済開発を標榜する「一帯一路」も、今や領土領海を簒奪(さんだつ)する覇権主義の象徴となった。台湾への態度、ウイグルや新疆の実態・・・   

 世界中が新型コロナの災禍に悩んでいるその最中にやることか、とだれもが訝(いぶか)るが、まさにその狂気性こそが今の中国共産党の本質であって、そこにいわゆる道徳律などは欠片(かけら)も見られない。人権も平和も民主主義も、また決めたことは守るとする近代法理も、全て毛沢東主義、習近平主義の前には何の意義も持たない。中国の一党独裁イデオロギーとは我々の持つ東洋的倫理とか西欧的近代思想とかの甘ったるい概念から、最も遠いものと思えば数々の現象は説明がつく、然らば、それを前提に外交を組み立てなければならない。   

 その昔、平成15、6年頃、小泉内閣の終わり頃だったか、小泉首相は靖国問題などで中国に酷く嫌われていた。愛知万博の帰りだかに、中国の副首相たる呉儀氏(女性)が小泉首相との面会をドタキャンして帰国したことがある。私は衆議院外務委員長をしていて義憤にかられ、かつ公的責任を感じたので、中国大使(当時は王毅氏)を呼び出して厳しく抗議した。さらに収まらず私は中国に行くと宣言し、単身で、秘書と2人で、北京に乗り込んだ。   

 こっちも議会代表だから全人代(国会)の副議長と外交委員長とが応接してくれた。さらに外交部(外務省)では武大偉副部長(副大臣、直前日本大使)と会った。私はそれぞれにこう切り出した。「我が首相へのドタキャンは失礼極まりない。私たち日本人は、全てこども時分から「孔子」や「孟子」を勉強し、人生の最も大事な倫理や道徳規範を中国から学んだ。それなのに、今の中国人はこの当たり前の道徳や礼儀、礼節はどうしたのか、論語や孟子は今どうなっているのか。」。3人とも頭を掻いていたことを憶えている。共産主義のイデオロギーには孔子のいう「摂理」とか「忠恕」という道徳律は完全になくなった、と改めて感じた。後刻小泉首相に報告に行った時、「君はよく元気に(生きて?)戻ってきたな」と褒められ、二人で大笑いしたものだ。