「藤井聡太」さんの登場で、にわかに将棋が大人気、注目を浴びるようになった。将棋ファンとしても大いに嬉しい。藤井さんは「棋聖」というプロのタイトルを有しており、しかも余りにも若く、17歳、高校生、というのがメディアの目を引いた。その存在を知らぬ人はもはやいまい、社会現象ともなった。そのタイトルというのは、数百人いるプロ棋士の最頂点で、他に「名人」とか「王将」、「王位」とかのタイトルがあるだけ。20連勝とか30連勝とかの成績は、彼の実力が決して「まぐれ」や「偶然」や「フロック」でないことを示す。   

ところで、敢えて付け加えると、彼の本当の強さは、その技、技術の凄さ、深さにある。棋譜に残す一手、一手の持つ意味は、本当に凄い深みがあり、それを将棋では「読み」と呼び、これは真に将棋をしている人にしか分かりません。私は有段者(アマ5段)だから、辛うじて理解できる、その奥深さにひとり感心し、唸(うな)っているのです。最近AI(人工知能)が進んできて、一層その技が複雑多岐に進歩してきたと言われる。   私は理解できるから威張っているわけではありません、どんな分野でも、例えばひとつ将棋をとっても、無限の深さと尊さがあるということです。サッカーの試合だって、私はゴールに入ったかどうかだけが重要ですが、本当のファンやキッカーは、蹴った場所、高さ、角度、周辺やキーパーとの駆け引きの瞬間にこそ、最高の見どころがあるのでしょう。   

若き藤井さんが、国民に元気と夢と勇気を与えてくれる、このコロナ禍に。別に難しいルールはいいのです、爽やかに、笑顔で、やっぱり高校生かと、少し出来過ぎかと思うこともありますが、それにしても私にとっては、末恐ろしい鬼気迫るものさえ想うのです。     

(写真は 1年前、福岡市での記念大会にて。私は福岡県将棋連盟会長です。)