特定指定暴力団「工藤会」(北九州市)会長に死刑判決がおりた。市民襲撃など4事件への判決である。地方によっては未だ古い暴力団組織が社会不安を煽っている。福岡県にはその数が比較的多いとされる。

 暴力団犯罪は組織犯罪の典型であって、実行犯(実際に殺人など犯罪を実行した者、いわゆる下っ端)と事実上それを命令した者(首謀者、いわゆる親分、大親分)が敢えて異なる場合が多い。社会的にはその命令者こそ罰しなければならないが、刑事事件の必須要件たる証拠が見つからない。刑事事件での証拠主義は刑事訴訟法(317条)で最も重要でほぼ絶対的な要件とされているが、今回の判決では犯罪の凶悪性、社会的な影響、組織の強行制等を踏まえて直接証拠がなくて「間接証拠だけ」でも有罪に出来ると判じたもの。

 検察側では状況証拠、間接証拠の積み重ねには途方もない努力が行われ、一方受けて立つ裁判官は「直接証拠がなくても」を乗り越えるために想像を超える苦悩と勇気を奮われた。相まって、遂にここに「極刑の選択はやむを得ない」という判決にまで至ったことには、私は両者へ心からの労いと感謝の気持ちを届けたい。      

 この判決が世に与える影響は大きい。暴力団的組織に対し、いくら証拠を隠しても、命令した首謀者は逃げられない、死刑にもなり得る、という先例と不気味な警告を残した。司法の凄みを感じさせる判決であった。       

 尚これは地方裁判所(福岡)の判決であって、被告は上訴するので、これからは上級審の判断に注目することとなる。